僕は気付けば僕の部屋にいた。
真っ暗な部屋、雨音が響く部屋。
そこにぽつんとあるベッドに、もう一人の僕は丸くなっていた。
そう、丸く。
まるで外からの全てを拒絶するように、布団でその姿を隠し、小さくなっている。
小さな、昔の僕。
あぁ、これは夢だと悟った。
最期にこんなものを見せるなんて、美しい顔をしていても魔女は魔女だったようだ。
こんな所で突っ立っていても仕方がない。
僕は部屋を後にして、原因の元へと向かった。
僕が森に来た原因の元へと…。
「―ない…絶対に…せない…」
聞こえてきたのは、啜り泣く母の声。
いつの日からか毎晩呪文のように繰り返される言葉。
幼い僕は聞こえないフリをしながらやり過ごす。
見えない呪縛にどれ程縛られようとも。
「どうしても、その想いは変わらないかい?」
祖母の声にはっとして部屋を覗き見た。
母の傍らに、今は懐かしい祖母の姿。
「えぇ…私にあの子を愛するなんて…無理な話です…。だってあの子は―」
「お止め。聞こえるよ。」
祖母が静かに制した。
一瞬目が合った。
僕の方の事を言っているのだろうか。
「聞こえたって構いません!私はあの子を愛せない!私の子を奪った…あの子なんて、消えてしまえばいい!返して…私の子を…」
母は崩れた。
聞き慣れた泣き声が部屋を支配する。
僕は小さな溜め息を一つ。
だから僕は家を出た。
祖母がいない今、僕と母の二人で生活なんて出来ない。
今度こそ母は狂ってしまいそうだから、それだけは避けたかったから。
気付けばこの家にいた僕。
記憶はない。
母が言うには本当の子供を奪ってまで、僕がこの家の子になったらしい。
真実は知らない。
結局最期まで分からなかったな。
死ぬ今となってはどうでも良いことだけど。
さあ、もうここに用はない。
何処かが夢の出口だ、探して早く出よう。
くるりと方向転換したときだった。
「―まだ行くのは早いよ。お茶でもどうだい?」
祖母が優しく微笑んでいた。
4に続く。
真っ暗な部屋、雨音が響く部屋。
そこにぽつんとあるベッドに、もう一人の僕は丸くなっていた。
そう、丸く。
まるで外からの全てを拒絶するように、布団でその姿を隠し、小さくなっている。
小さな、昔の僕。
あぁ、これは夢だと悟った。
最期にこんなものを見せるなんて、美しい顔をしていても魔女は魔女だったようだ。
こんな所で突っ立っていても仕方がない。
僕は部屋を後にして、原因の元へと向かった。
僕が森に来た原因の元へと…。
「―ない…絶対に…せない…」
聞こえてきたのは、啜り泣く母の声。
いつの日からか毎晩呪文のように繰り返される言葉。
幼い僕は聞こえないフリをしながらやり過ごす。
見えない呪縛にどれ程縛られようとも。
「どうしても、その想いは変わらないかい?」
祖母の声にはっとして部屋を覗き見た。
母の傍らに、今は懐かしい祖母の姿。
「えぇ…私にあの子を愛するなんて…無理な話です…。だってあの子は―」
「お止め。聞こえるよ。」
祖母が静かに制した。
一瞬目が合った。
僕の方の事を言っているのだろうか。
「聞こえたって構いません!私はあの子を愛せない!私の子を奪った…あの子なんて、消えてしまえばいい!返して…私の子を…」
母は崩れた。
聞き慣れた泣き声が部屋を支配する。
僕は小さな溜め息を一つ。
だから僕は家を出た。
祖母がいない今、僕と母の二人で生活なんて出来ない。
今度こそ母は狂ってしまいそうだから、それだけは避けたかったから。
気付けばこの家にいた僕。
記憶はない。
母が言うには本当の子供を奪ってまで、僕がこの家の子になったらしい。
真実は知らない。
結局最期まで分からなかったな。
死ぬ今となってはどうでも良いことだけど。
さあ、もうここに用はない。
何処かが夢の出口だ、探して早く出よう。
くるりと方向転換したときだった。
「―まだ行くのは早いよ。お茶でもどうだい?」
祖母が優しく微笑んでいた。
4に続く。
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